理想
April 23, 1998
出張を無事終え、成田に戻ってきました。税関を出るともう時間は5時近く。会社に1本電話をして今日はそのまま自宅へと帰ることにしました。
自宅についてほっと一息ついていると友人から連絡があり、急にでかけることになったので、ジーパンにトレーナーという格好で夕方の通勤ラッシュの電車に乗り込んだわけです。
正直ぞっとしました、通勤電車。どうしてみんなこんなに疲れているのでしょう。電車にすし詰めにされて、不平ひとつもらさずに黙々と帰宅していく人の群れ。多くの人の顔には深い疲労の色が見えます。中には酔っ払って会社で言えない文句を仲間内で延々と話しているおじさんたちもいますが、それも見ているとみっともないだけです。唯一元気なのは若い女性だけ。本当にこんなことでよいのでしょうか?普段は自分もこの群れの中の一人なんだと思うとやり切れない気もちで一杯になります。
日本は戦後50年で戦争の焼け跡から復活し、世界に冠たる経済大国になりました。でも、豊かになったのは経済統計の数字だけのように思います。本当に暮らしている人達が人間らしい暮らしをおくれる豊かな国なのでしょうか、日本は?
出張先のハワイは、もともとアメリカ国内でも物価が高く、最も暮らしにくい場所とされています。経済自体もここ数年歴史的な落ち込みを見せており、人々はレイオフの恐怖に直面しています。でもこんなに疲れた人の群れを見つけることはできません。みんなもっともっと人間らしい暮らしをしています。
16兆円という経済対策のパッケージが取りざたされています。これほど巨額の資金をどう使うのかという議論が真剣になされているとは思えません。橋や高速道路、誰も利用しない公共施設を作るのはもう止めましょう。もっと誰もが人間らしい生活環境を築くことを可能にするために16兆円は使ってもらいたいものです。16兆円は将来の世代からの借金なのですから。
首都移転などという夢物語を追いかけるのは止めて、既存の3権(行政、立法、司法)のうち、せめて2つを東京以外に移すというのはどうでしょうか?そしてその移転先に企業が移ることを税制の面から支援すればよいのです。そうなれば喜んで東京を離れる企業が出現するでしょうし、東京の発狂したような住環境も多少は好転するでしょう。
あるいは証券取引所と中央銀行を別のところに移すことも良いアイディアではないでしょうか。そして、その移転先の市場は証券取引税や源泉税の点から優遇するといういわばオフショア市場的な存在とすれば、金融関係者はこぞってその移転先へ付いていくでしょう。さらに東京と移転先を結ぶ通信インフラを拡充することも大事でしょう。通信インフラさえ整えば特に金融の世界などは物理的な場所など何も関係ないのですから。
そんな現実味のない主張はよせ、と言われるかもしれません。しかし、理想の姿がなければ国家というものは決してより良い方向には進んでいかないと思います。そして、理想論が失われているが故に日本の政治は国民からの信認を失っているのです。
16兆円が未来へのビジョンを伴う形で使われ、景気を刺激し、誰もが暮らしやすい新たなる日本の礎となることを希求して止みません。