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狼と羊


多くの金融機関では日本版ビッグバンに対応するために人事制度の改革が行われつつある。キーワードとなるコンセプトは「プロの養成」だ。特定業務においてどこへ行っても通用する能力を持った人材を育成するのが主眼である。

しかし本当に「プロ」を今の組織の中で養成することが可能なのか私ははなはだ疑問を感じる。

これまで、日本の企業組織においては、どれだけ組織に忠誠を誓えるか、言い換えれば組織への貢献度合いを投入した時間、労力をもって計測するということが人事評価の基本であった。要は、どれだけ全人格を組織のために投げ出しているかという、業務成果とは直接関係を持たない部分での評価が昇進と直結していたわけだ。

それを業務成果と直結した形で評価しようという方向転換がなされている。しかし、これは今までの日本の組織を真っ向から否定することに他ならない。今までの日本企業が作り出してきたのは組織の中でのみ機能する能力しか持たない羊の群れである。その羊が狼を育てようという話だから笑ってしまう。

「プロ」にとっては昇進やら序列といった組織への忠誠心は意味を持たない。自らが行っている仕事に対する矜持と成果に見合った報酬のみが座標軸となる。「プロ」と「組織」は対等である。こういった考え方を「組織」が受け入れなければ本当の「プロ」は育たない。

羊の群れの中の狼は羊を食い殺すか、あるいは狼に恐れをなした羊が集団で狼を押しつぶすかのどちらかだろう。一体日本の金融機関はどちらを選択しようとしているのだろうか?