破綻
November 17, 1997
今日は風邪をひいて高熱がでてしまったので会社を休んで終日休養をとっていた。
朝、医者に行くときに駅の売店で新聞を買おうと思ったのだが、今日は日刊紙はお休みだった。それで勝手に「週末は北拓に何も起こらなかったのだな」と思いこんでしまっていたのだが・・・やっぱり、何かあった。
医者に行った後はひたすら眠っていて、夕食のために目を覚ましたのが夜の10時半過ぎ。そこでおかゆを食べながらニュースを見ていると北海道拓殖銀行が資金繰り破綻から北海道内の第2地銀へ営業譲渡して解散するという事だ。やっぱり潰れちゃったのね・・・
三洋証券破綻以来コール市場での資金調達が厳しいという話は耳にしており、先週からは「今度の週末には北拓が」という噂がまことしやかに流れていたのが、現実の話になってしまった。都市銀行が潰れるたという事実はインパクトは強いのだが、でも予想通りだねという気持ちも半分ある。
熱でいまだぼーっとしているが、今回の破綻で思った事をいくつかまとめてみたい。
(1)市場によるNO
銀行はよほどの事が無い限り潰れないというのが金融関係者の認識であった。なぜならば大手金融機関は大蔵がつぶさないだろうという暗黙のコンセンサスにのっかってコール市場などで資金供給が続き、実質的に債務超過になっていても資金繰りは破綻しないものであったからである。ところが今回は違った。現時点では北拓が債務超過になっているのか否かは不明であるが、資金繰りの破綻が今回の営業譲渡・解散への直接の引き金である。「都銀が資金繰りショートで破綻」今までの金融常識からは考えられない話だ。
しかし当たり前のことと言えば当たり前である。要は、三洋証券でのコール資金、劣後ローンデフォルトの事実に直面した資金の出し手がやっと普通の市場の論理に目覚めたからであろう。「やばそうなところのラインはカットする。」ごもっともである。すこしは日本の金融市場もまともになってきた兆しと見ることができる。
(2)行政主導の破綻劇の限界
それと同時にこれは、今までの行政当局主導の破綻劇が通用しなくなってきたということの現われでもある。今までは行政が資産内容を調査し、シナリオを描き、準備を整えた上で破綻へと進んでいたが、今回はそういった余裕はほとんど無かったようだ。上に書いたようにまず市場がNOをつきつけたのである。実際、北海道内の資産の譲渡は決定しているが、それ以外の部分は事実上白紙と言ってもおかしくない。株価は公的資金の導入への途がついたということを好感してリバウンドしているが、果たして手放しで喜んで良いのだろうか?いつどこが市場にNOを突き付けられるのかは市場以外には予想がつかない。第2、第3の北拓が出てこない保証はどこにも無い。
(3)ディスクロージャー不足
TVを見ていたら有名なエコノミストが「自由主義経済なのですから関係者(預金者、株主)がまず負担しなくてはならない。国民負担にするというのは不透明だ。」と述べていた。
この発言は半分正しくて、半分間違っている。
公開企業の運営状況が適正なる投資判断を実施するに足る程度にディスクローズされているのであれば株主に責任を求める彼の発言は正しいだろう。更に、預金者が預金をするか否かという判断をするに足る情報開示がなされているのであれば預金者に責任を求める彼の発言も正しいだろう。
しかし十分な情報開示、ディスクロージャーがなされていない中で預金者、株主に責任を求めることは詐欺に近い話である。普通の人が開示されている情報を見れば「こりゃやばい」とわかるような情報開示がなされていないのであれば、預金者、株主の責任を直接問うのはお門違いであろう。
少なくとも北拓の経営陣が資金繰りに問題が発生する懸念があるというディスクロージャーを行ったという話は聞いていない。三洋証券の時も同じである。経営が相当まずい状態にあることは彼らは認識していたはずである。知らなかったという言い訳は許されまい。なぜそれを開示しなかったのか。まず最初にこういった「ほらふき」「嘘吐き」の経営者の刑事上、民事上の責任を徹底的に追及すべきである。「儲かりますよ、安心して資金をおまかせください」と言って善良な市民から資金をまきあげていた数多くの詐欺事件と図式としては何ら変ることはないではないか。むしろ公開の市場を利用したという点から見ればより悪質であるといえよう。
次に背任を問われるべきは銀行行政を司っていた大蔵省である。日産生命の時も大蔵省は債務超過状態にあることを知りつつ放置していた。今回の北拓にしても経営状態が危機に瀕していることは承知していたはずであり、それ故北海道銀行との合併を模索したり、金融機関に追加出資の要請をしたりして水面下で動いていたのである(大蔵検査を終了させ日債銀方式での再建を目論んでいたことは明らかである)。もはや当局の神通力は市場の力の前にはなす術がないのである。早いことをそれを認識し、積極的な介入をとりやめ、最終的な破綻時のスイーパーとしての役目に徹すべきであろう。
市場では次はどこかという獲物探しが明日からまた始まることだろう。金融機関の経営者の方々には自分達が経営する会社がそういった市場の厳しい目でチェックされているという事実を忘れないでもらいたい。