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金融機関の破綻と法律


伊藤師匠のダイヤリーに今回の山一證券の動きに関する法的な話がでていました。それを読んで私の現時点で思い付くことを簡単にまとめてみました。もちろん、今後の具体的な展開が見えない状況ですので話しとしては一般論になっておりますが、ご理解ください。

金融機関の処理はいままで殆ど行政主導で行われていたこと、更にノンバンクの処理についてもメインバンクが法的処理に至るプロセスにおいてその面倒を実質的に見ていたことなどから、実際に破産法などの会社整理に関する法的手続きのみによって処理が進められたケースが極めて少ないのが現実です。

従って、現在の日本における法的な枠組みがどの程度実務においてワークするのかという点については残念ながら手探りで進んでいかざるを得ないと思われます。(そういう意味においては、三洋証券の会社更正法申請も通常手続きから考えれば相当異例と考えられることが東京地裁によって信用不安回避の観点から認められているという状況があります。)

金融機関に関係する債権者の数は通常の事業会社における債権者の数とはまったく比較にならないほど多いという点は重要なポイントとなります。現実的には債権者集会すら開催することは不可能であり、債権債務の確定にあたっても気の遠くなるような作業が必要となるはずです。更には単純に債権者間の平等という法的な視点のみならず、小口債権者の動揺を押さえ、金融システムの安定性の確保という視点をも考慮に入れて作業は行われなくてはなりません。

また、本件のような多国籍にわたって資産を保有している会社の整理にあたっては、資産が存在する国が多数にわたることから、複数国における法律が絡んできます。法律用語では国際並行破産(Cross-Border Insolvency (bankruptcy))と呼ばれる分野の話です。たとえば日本の破産法は破産管財人の力が及ぶ範囲を日本国内に明確に限定していますが、米国などは普遍主義と呼ばれる法理を採用しており、どこの資産であろうとも米国の法律が適用されるとしています。こういった根本的な考え方が異なる法律が絡み合い、様々な法廷地で差押訴訟などが起こされという状況が発生しないとも限りません。不幸にして日本における国際並行破産の分野の先例は大変少ない状況です。最も直近のケースではマンション業者のマルコーの会社更生手続きにおいて米国子会社のチャプター11が提起されたという事例がある程度です。

問題点ばかり羅列してしまいましたが、本件に関わる法曹関係者の皆さんは円滑な処理の遂行に全力を尽くされることと思います。今まで誰も直面したことの無い内容、規模の作業を行われることになりますが、それが成功裏に進むことを願ってやみません。

日本版ビッグバンは金融機関の業務の自由を与えると同時に、金融機関に破綻する自由をも与えます。舞台から姿を消すプレイヤーが混乱なく撤収できるセーフティーネットは経済的実質のみならず法的な面においても裏付けが必要となってくるはずです。信用の輪を断ち切らない法的な枠組みをしっかり作り上げること、すなわち入口と共に出口を整備することが急務です。

言葉は悪いですが、今回破綻した三洋証券、北海道拓殖銀行、山一證券のケースは日本の会社整理関連法規が金融機関破綻においてどの程度機能するのかという試金石になります。これらのケースを処理していく過程において判明した問題点は早急に議論を行い、法律の改正という形でフィードバックされなくてはならないでしょう。それを促進し、よりよい法的な枠組みを作り出すことが、今回の不幸な出来事を明るい未来へと繋げるという意味において、金融関連法務に関わる全ての法律家に課せられた使命であると考えます。