日本型SOHO
December 13, 1997
クルマの部品を買いに横浜(新横浜駅のそば)まで出かけた。
KG Worksというロードスターのアフターマーケット部品を作っているところなのだが、実際の名前は(株)北川製作所である。クルマの部品を売っているというイメージからすればかっこいいショールームやらディスプレーがあって・・・と思うのだが、「工場(こうばと読む)」の上の事務所の応接に商品をかざってあるといった風情であった。
工場の横にあるむき出しの階段を上って、飾り気の無い事務所に入っていくと、中年の女性事務員さんが「あ、ちょっと待っててくださいね。今わかる人が来ますから」と言って、私を奥に通してくれる。今は亡き私の祖父は鉄材関係の事業をしていたのでこういった工場の雰囲気はとても懐かしい、鉄のにおい、機械油のにおいが祖父のことを思い出させる。
通された応接にはさまざまな部品が壁につるされ、机の上にはノートパソコン、それから英文の書類が何枚か置いてあった。しばらく待つと、多分2代目とでもいう雰囲気の方が現われ、とても丁寧に商品の説明をしてくれた。買おうと思っていた部品3つのうち1つは手に入らなかったのだが、まあ2つは買えたのでよしとしよう。
このKG Works、もとはクルマ関係の部品を下請けとして作っていた北川製作所がロードスター向けの部品を自社ブランドで売り出したもので、他のアフターマーケット商品に比べ品質はまったく遜色ないが値段が安いことで定評がある。その理由が実際に来てみてわかった。階下にあるプレスマシンなどを使い自分の工場で作った商品を、中間流通業者をまったく介しないで直接通信販売やらカーショップに売ったりしているからである。
私の祖父の事業を継いでいる従兄弟のところにもビンテージカーやビンテージバイクのオーナーの方がそれこそ日本中から突然やってきて「こんな部品は作ることができますかねぇ?」と依頼するそうだ。そして、ほとんどの場合何の苦も無く鉄材やアルミ材を切ったり、溶接したりで注文通りの部品を簡単に作ることができる。多分、北川製作所にも同じように、自分だけのクルマを作りたいオーナーの方が何人も自分だけの(ワンオフ)部品の注文に訪れていたのだろう。そして、クルマ好きだった若い2代目が「これはビジネスになる」と思い、KG Worksというブランドを立ち上げるということになった、といったところだろうか。
JAVAを使ったホームページもあり、実際の部品を画像で見られるようにもなっているし、海外とのやり取りだって電子メールやファックスがあれば何の問題も無い。ロードスターはミアータというブランド名でアメリカ、ヨーロッパなど世界中に輸出されており、それと共にKG Worksの商品は世界中へ輸出もされている。
世間で騒がれているSOHOであるが何もアメリカの流れを追いかけることはあるまい。既存の概念に囚われないところにSOHOの強みはあるはずだ。自分達の持っている技術に対応するマーケットがあることを認識し、自らの製品を新しいブランドで包み直してマーケティングし、世界へとはばたいていく。既存技術のマーケット志向によるリパッケージと流通プロセスの改革が日本型SOHOがあるべき姿ではないだろうか?
日本の製造業の発展を支えてきた中小企業には世界に誇れる技術力がある。残念なことにこういった中小企業も海外へと逃避し、製造業における空洞化が起こっているのが現実だ。なぜならば納入先である大企業が生産拠点を海外へと移しているからである。しかし、もし中小企業の多くが自らの技術、製品を直接売り込む市場を見つけることができれば、付加価値を確保し、日本国内に留まることも可能であろう。そしてそれを手助けするのが、インターネット、PC、携帯電話などのテクノロジーに裏打ちされたマーケティングであろう。
金融に働くものとして、こういった地に足の付いたSOHOを経営管理、資金面などで応援していきたいと思うが、果たして日本の金融機関にそういったノウハウ、さらにそういう分野に踏み込んでいく度量があるのかについては、自信を持って「Yes」と答えられないのが残念である。