多所懸命
December 21, 1997
なんだかどうも世の中さえないことが多いと言われている。株が下がったとか、倒産が増えたとか、円が安いとか。新聞を読むと毎日くらい話ばかりである。
だが、自分の身の回りを振り返ってみてどうだろうか?誰かが飢え死にしたとか、ホームレスになったとか、そういった極端な話は耳にしない。みんなそこそこの暮らしをして、買い物をしたり、酒を呑んだり、クリスマスプレゼントのことを考えたりしている。アメリカでは失業率が史上空前の低い数字だと大騒ぎしているが、それでもこんなに暗い日本の失業率の方がまだまだ低い。円が安いと大騒ぎしているが、アメリカの財政赤字をまかなうために発行されている米国国債の25%を保有しているのは日本だし、世界最大の債権国は日本だ。
明日のことを考えないで、その場だけ楽しければ良いと言う無軌道な生き方を勧めるわけではないが、もっと楽天的に考えることを日本人は学ぶ必要があるように思う。
一所懸命という言葉は農耕民族である日本人の考え方を象徴した言葉だ。一つの場所に留まり、そこで命懸けでがんばる。これは大事なことかもしれないが、そういうドグマが今の日本を必要以上に暗くしている。一流企業に入社し、出世し、偉い肩書きを手に入れ、偉そうにふんぞり返るという今までのベストシナリオが崩れ去ることに恐怖を抱いているだけではないか。これがすべてではない。もっとしなやかになろう。
自分の居場所、がんばる場所は一ヶ所ではない。もし今いるところが駄目ならば、次に移れば良いだけだ。但し、どこにいようとも自分が信じたこと、自分がやりたいことをやりつづける。そういう生き方への転換ができれば、もっと世の中は明るくなり、日本という国も自信を取り戻すことができるはずだ。
一所懸命ではなく多所懸命だ。