
(Last modified on June 10, 1995)
バブル崩壊で金融機関の収益が伸び悩んでいる現在、人件費特に残業代の圧縮 は経営サイドにとっては危急の問題であると思います。ですから,今期は減益であるから残業代の予算はこのぐらいに押さえておこうという予算計画を組むのは経営とし ては当然のことでしょう。
しかしながら,当然に人的な経営資源(即ち従業員の人数)に増加がないかぎりは残 業代の予算圧縮を計れば,生産性の向上がないと仮定すれば企業体としての企業活動量は減少するはずです。経営者の皆さんは優秀な管理スタッフがいることを確信され ているケースが多いようで,残業代の圧縮は生産性の向上によってカバーされ,全体としての企業活動が減少することなど無いと信じていらっしゃるようです。
ですが,多くの実体はサービス残業の増加によって従業員の犠牲のもとに全体の企業 活動量の維持がなされているのではないでしょうか。多くの金融機関では期中の残業の予算が決まっており,大抵の場合何があってもそれを越えて残業代がつくことはあ りえないのが実情の様に思えます。「予算から逆算すると今月の残業はX時間だから、みんなよろしく」という管理者の発言を聞いたことのある銀行員は数知れないと思う のは私だけでしょうか。
通常管理職でないサラリーマンというのは自分の時間を企業に売り渡すことによって 給料をもらっているわけですが,その対価が正当に支払われないということは明白な契約義務違反であり到底高度な公共性を持った金融機関という企 業がやるようなことではないのではないでしょうか。統計上は日本の金融機関の労働時間はその他の産業に比較して短いためにお褒めに預かっているようですが...
今多くの金融機関はノンバンクや不動産会社が金利の支払を行なっていないと言って 憤っています。ですが自分のところの従業員に対してその労働の正当な対価すら払えない金融機関が他人のことを批判することが出来るでしょうか。全く以て笑い話以外 の何物でもありません。金融機関にとって従業員のサービス残業が収益調整のバッファであるならば,経費という面では同じ位置づけがなされる金利の支払を収益調整の バッファとしているノンバンクや不動産会社に対して金融機関が大きな態度で文句を言える筋合いではないのではないでしょうか。
もっと言うならば金利減免を書面でお願いに回っているノンバンクや不動産会社のほ うがよっぽどましでしょう、なぜならばサービス残業のお願いという書面をもって従業員一人一人を回っている金融機関の経営者を私は聞いたことがありませんから。
英国の貴族達がいつも心に持っている言葉にノブレスオブリュージュという言葉があ ります。それと全く同じことが残業代のつかない所謂役員、管理職と言われる人々と一般の従業員との関係でいえるのではないでしょうか。順風の時には何も難しいこと はありません、真価が問われるのは逆風の時なのです。たくさんの給料は決して「今期は予算がこれだけだから付けられる残業は一人あたりこれだけしかありません」と いう単純な割り算をするために支払われているとは到底思えません。サービス残業等によらない生産性の向上によるフェアーな形での減益対策が出来なければ、簡単です 、役員や管理職自らが一般の従業員に残業代が支払えない結果残った仕事をやればよいのです。いくら働いたって残業代はかかりませんから経費のことを心配する必要は ありません。
ですが現実は、生産性の向上策もうまく策定できないし、かといって残業予算も増や せないという局面に立たされたときに、「しょうがない自分で伝票の整理などの一般行員が残した仕事をやらなくてはいけないのか」という覚悟が日本の金融機関の経営 者や管理者に出来ているとは思えません。「俺も昔はよくサービス残業をやらせられたし、それが当たり前だよ」と言い訳を続けているかぎりは永遠に問題は解決されま せん。